すばる法律事務所 Subaru law office

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すばる事務所通信

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11.4.22号 「借家の補修費用」

 4月になり、裁判所や検察庁では、人事異動により当該事件の担当者の顔ぶれが大幅に入れ替わっていたりします。一般企業でも、この時期は、異動による転勤が少なくないことでしょう。

  勤務先が社宅や寮を備えていれば別ですが、このような異動によって、それまで住んでいた家を退居し、新たに住居を借りる方も少なくないと思われます。

  退居により住居を明け渡すと家主さんに預けていた敷金が返ってきますが、クリーニングや補修等の費用が大きく差し引かれて、実際に手にする金額に驚いたというご経験をお持ちの方もおられると思います。

  民法では、賃貸人は賃貸物件の使用に必要な修繕をする義務を負うとされており、当事者間でこれと異なる約束をしない限り、人が生活することによって自然に生ずる損耗(通常損耗)は家主さんが費用を負担して補修すべきということになります。そして、このような損耗の発生は当然予定されているものであるため、賃料は通常損耗部分の原状回復費用も含むものであると一般に考えられています。ところが、実際には、通常の使用によっても生じるような床や壁の汚れやキズの補修費用についても借主が負担する旨の特約が入った契約が多いであろうと思います。

  最高裁は、通常損耗部分の原状回復義務を負うのは貸主であるとし、このような特約が有効であるためには、通常損耗の具体的範囲が明記されているなど明確な合意がなされている必要があるとしました(最判平成17年12月16日最高裁判所HP等)。

  また、通常損耗部分の回復費用を借主に負担させる内容の特約は、消費者の利益を一方的に害する無効なもの(消費者契約法10条)とした下級審の裁判例も複数あるようです(もっとも、有効とされた例もあるようです)。

  一方、関西地方に多いと思われる敷引特約(敷金のうち一定額を貸主の取り分として控除して返還する内容の特約)がなされている例で、1か月程前に最高裁は、当該建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額、賃料の額、礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らして、敷引金の額が高すぎれば無効(消費者契約法10条)との一般論を展開し、当該事案における敷引特約は有効との結論を示しました(最判平成23年3月24日最高裁判所HP)。

  以上の判例、裁判例を見ていると、借家の通常損耗部分の負担を借主が負うかどうかは、個別の事情によって相当判断が分かれることにもなりそうですが、一般消費者にとっては、賃料がどのように決められるかの情報は手に入りにくいでしょうし、賃料とは別に礼金や更新料を払うことも少なくなく、それらの金額が妥当なのかどうかも検証のしようがありません。実際には、家主さん(仲介業者)から示される特約をそのまま受け入れることが多くなってしまうように思います。

  仮に、通常損耗部分の補修費用の負担を求める内容の特約が全て無効となると、貸主としては賃料の値上げを検討せざるを得なくなるのかもしれませんが、結果的に通常損耗部分の補修費用を負担することになるのであれば、最初から賃料として支払った方が借主にとってもわかりやすいとも思うのですが、私だけでしょうか。(大菅)



 

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